先に結論だけ、そっと置いておきますね。寝かしつけの音楽を選ぶときのいちばんのめやすは、静かで、変化が少なくて、あなた自身がほっとできるものです。テンポはゆっくり、音数は少なめ、そして途中で急に盛り上がらないもの。子どもに合わせることも大切ですが、隣で聞いているお母さん・お父さんの心がほどけるかどうかも、同じくらい大事だと私は思っています。
ここでは「これを流せば眠る」という話はしません。眠りは音楽だけで決まるものではないからです。ただ、選び方の目安があると、夜の時間が少しだけ楽になることがあります。私が三人を育てながら、そして赤ちゃん向けの音楽を作りながら感じてきたことを、手紙のように書いていきます。
寝かしつけ音楽の選び方でまず見たい「静けさ」
最初にお伝えしたいのは、音楽の「静けさ」です。寝る前の時間は、日中のにぎやかさから少しずつ離れていく時間。そこに合うのは、大きな音や強い刺激のないものです。具体的には、音量が控えめで、高い音がキンとしないもの。ピアノやオルゴール、ゆっくりした弦の音などは、耳にやさしく届くことが多いように感じます。
反対に、途中でリズムが変わったり、急に音が増えたりする曲は、寝る前には少し落ち着かないこともあります。私自身、良かれと思って明るい曲を選んだら、子どもがかえってごきげんになってしまった夜が何度もありました。眠りに向かう時間には、盛り上がる音楽より、静かに続いていく音楽のほうが寄り添ってくれることがあります。
「静けさ」は曲そのものだけでなく、流し方にも表れます。小さめの音量で、少し遠くから聞こえるくらいがちょうどいい、と感じる人もいます。まずは、部屋全体がふっとやわらかくなるような音量を探してみてください。
テンポと音数は「少なめ」を目安に
次に見たいのが、テンポと音数です。寝かしつけに向く音楽は、ゆっくりしたテンポで、鳴っている音の数が少ないものが多いように思います。音がたくさん重なっていると、耳がそれを追いかけてしまって、なかなか力が抜けないことがあるからです。
目安として、心臓の鼓動よりも少しゆっくりに感じるくらいのテンポは、体がゆるみやすいと感じる人が多いようです。もちろん、これは決まりではありません。あなたのお子さんが心地よさそうにしているテンポが、その子にとっての正解です。
音数については、メロディがひとつだけ、そこにやわらかい伴奏が少し添えられているくらいがちょうどいいことが多いです。私が音楽を作るときも、「引き算」を大切にしています。足すよりも、そぎ落としていくほうが、眠りに向かう時間には合うと感じるからです。にぎやかな曲が悪いわけではありません。ただ、寝る前の一曲としては、シンプルなものが力を貸してくれることがあります。
歌詞のありなし、環境音という選択肢
音楽には、歌詞のあるものとないものがあります。どちらが合うかは、その子や、その家庭によって違います。歌詞のある子守唄は、お母さんやお父さんの声とつながっていて安心する、という子もいます。反対に、言葉があると意識がそちらに向いてしまう場合は、歌詞のない演奏だけのものが合うこともあります。
もうひとつ、音楽ではなく環境音という選び方もあります。雨の音、波の音、小さな生活音のような「ホワイトノイズ」に近い音です。これらは変化が少なく、ずっと同じ調子で続くので、静かな背景として使う人もいます。おなかの中にいたころの音に近い、と感じる方もいるようです。
私の場合は、その日の気分で使い分けていました。抱っこで揺れながらは声で歌い、布団に入ってからは静かな演奏に切り替える、という夜もありました。正解をひとつに決めなくて大丈夫です。いくつか手元に用意しておいて、その夜の様子で選べると、気持ちにも余裕が生まれます。
今夜からできること
むずかしく考えなくて大丈夫です。今夜、少しだけ試せることを挙げてみます。どれかひとつでも、ためしてみられそうなものがあればうれしいです。
音量を少し下げてみる
いつもより一段階、音を小さくしてみてください。遠くから聞こえるくらいがちょうどいいことがあります。大きな音より、そっと流れる音のほうが、部屋がやわらかくなることがあります。
同じ曲をくり返し流す
毎晩ちがう曲より、同じ曲や同じ音を続けるほうが、体が「そろそろ寝る時間」と感じやすいことがあります。くり返しは、退屈ではなく安心につながる場合もあります。
始める時間を少し早める
布団に入る少し前から流し始めてみてください。音楽で急に眠らせるより、眠りへ向かう道をゆるやかにつくるイメージです。あわてない時間があると、大人の肩の力も抜けます。
自分がほっとするかで選ぶ
その曲を聞いて、あなた自身の呼吸が深くなるかを目安にしてみてください。隣で聞く人が落ち着いていると、その空気は子どもにも伝わることがあります。まず自分のための一曲を選んでいいのです。
タイマーを使って手放す
一定時間で止まるように設定しておくと、消しに戻る必要がなくなります。あなたも一緒にうとうとしてしまって大丈夫。音を止めることまで自分でやろうとしなくていいのです。
合わない夜はやめてもいい
その日によって、音楽が合わないこともあります。今夜は無音のほうが落ち着きそうだと感じたら、流さない選択もありです。うまくいかなくても、あなたのせいではありません。
眠れない夜が続いて気になるときは
音楽はあくまで、夜の時間にそっと寄り添う道具のひとつです。眠りには、その日の疲れ具合や体調、成長の段階など、いろいろなことが関わっています。だから「音楽を変えたのに変わらない」と、ご自分を責めないでください。うまくいかない夜があって当たり前です。
もし、眠りのことや発達のことで気になることが続くようなら、小児科や、お住まいの自治体の子育て相談の窓口をたよってみてください。話すだけでも、少し軽くなることがあります。ここでは診断のようなことはお伝えできませんが、専門の人につながることは、けっして特別なことではありません。
音楽の選び方に、たったひとつの正解はありません。あなたとお子さんが、少しでも心地よくいられる音が見つかれば、それがいちばんです。今日も一日、よくがんばりましたね。この文章を読んでいる今この時間も、あなたはちゃんとお子さんに向き合っています。どうか、あなた自身にもやさしい夜になりますように。


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